第5回 「じぇじぇじぇ!」 NHK連続テレビ小説あまちゃんのアキの言葉
長嶋(巨人軍終身名誉監督)さんが巨人軍監督の時、自軍の選手に守備はゴロをサッと捕って一塁にピシッと投げる、解った?と身振りをまじえて指導していました。バッティングでも、ボールをグーと懐にひきつけグッツと腰の回転でバシッとたたく。変化球は1,2,3ではなく1,2-の,3で2-のでためをつくり打つといった具合です。なんのことか我々にはさっぱりですが、その道のプロは視覚、聴覚、触覚に加えて擬音という感覚印象から自分の技術を高めていくことができるのでしょう。このサッ、ピシッ、グー、グッツ、2-の等は「オノマトペ(仏語で擬音語・擬態語を意味する言葉)」といいます。
調剤薬局でも患者さんからの痛みなどで複雑微妙なものをいろいろな言葉で伝えてもらっています。表現しにくい症状を独自のオノマトペで表現いただければイメージしやすく、感覚印象がより身近に感じることができます。「ヒリヒリ痛い」「ズキンズキン痛い」「キリキリ痛い」「ピリピリ痛い」「チクチクしたシビレ」「お腹がニヤニヤする」「何かを踏んでいるようなボワーンとした感じ」「ピリッと電気が走る」等々たくさんあります。患者さん一人ひとりが感じる表現しにくい症状をそのまま私たちは記録させていただきます。それが次回来局時に同じ表現からスタートすることでスムーズに会話が進み、相互に共感しやすくなり安心や納得が生まれます。
担当者:「チクチクした左足のシビレはいかがですか?」
患者さん:「それはだいぶ良くなった、しかしちょっとした足の角度で、ピリッと電気が走る。あれって急に来るのでビクンとしていやだね。分かるしょ?」
担当者:「分かります、チクチクがピリッになり、急にビクンですね」
東日本大震災で医師をはじめ医療関係者が全国から駆けつけました。「この暑さで あふらあふら なんねぇ方が おがすい」、「朝ま 手の指ぁ もんもりすて 皮ぁ つぃっぱるよぁな 気ぁする」と訴えられこまった医療ボランティアがたくさんいたことでしょう。前述の例はネットにあった東北方言の豊かで多彩な表現の一例です。最初は、「この暑さでふらふらしないほうが変だ」と語感から推測できます。次の「もんもり」は腫れて重く熱を持った様子を表現したオノマトペで「朝方、手の指が腫れて、皮がつっぱるような気がする」ということになります。
表題の「じぇじぇじぇ」は、母親の実家がある岩手県北三陸を訪れ、海女を続ける祖母の姿に影響され海女になる決意をしたアキが発する驚きを表す方言で「じぇ」の数が多いほど驚きが強い。これもオノマトペです。「じぇじぇじぇ」は今年の流行語大賞になるかもしれませんね。
(追伸)
「東北方言オノマトペ用例集」は国立国語研究所が作成し東北の主な医療機関に配布